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ルワンダ中央銀行総裁日記

面白かった!

1960年代の話。
作者は東大法学部を卒業後、海軍大尉としてラバウル終戦を迎え、終戦後は戦犯裁判弁護人となる。その後、日銀に入り65年に国際通貨基金の技術援助でルワンダ中央銀行の総裁として出向する。

当時のルワンダは統治領から独立したものの赤字で物資も乏しく、依然として外国人が利益を得る社会構造であった。

アフリカの小国であるルワンダの情報は海外に出まわらず、作者は何も分からないまま出向となる。

ルワンダ中央銀行に着きヒアリングを開始すると、銀行業務が出来る人がいないという始末で、総裁自ら帳簿付けをする所からスタートする。


内容を端的に言うと、経済改革でルワンダを発展させた人の日記。

 

日記なので、作者がおこなった事務的な仕事が淡々とつづられているが、不利な状況や抵抗に屈せず、様々な視点と経験から施策する様子が小気味いい。

「何が何フランで~」「税率をいくつにして~」とお金の計算がひたすら出てくるので、それらに興味がないと少し飽きるかも。でも、なぜその数字にしたのかという意図が書いてあって面白い。


例えば、特別に利益を得ている外国人の利益を減らしたい時に、所得税ではなく関税を課している。
理由は、途上国で働いている外国人に納税思想を期待するのが無理なのと、途上国の役人は外国人にコンプレックスがあり突っ込んだ調査ができないので、虚偽申告と脱税が横行する。そのため、所得税を上げるのは適さず、外国人が好む海外の肉などの間接税を課したという内容。

他には、通貨の対外価値を引き下げる(平価切下げをする)時に、通貨改革の成功を印象づけるため、物資が不足しているルワンダに大量に物資を輸入したいが、現状は無理である。せめて一つくらいはということで、印象が強く残る大衆愛好品の砂糖に決めたという内容。

あとは、ルワンダ人は働かないと言われるが本当にそうだろうか?という問いを持った作者は、田舎の農作業を見て気づく。綺麗に手入れされた小屋を見て、ルワンダ人は真面目に働いていると。では、なぜ働かないと言われるのか。実は大臣や銀行で働いている職員も、ルワンダ人は皆、田畑を持っていて農作業もしている。そのため食べ物に困らない。また、国内の物資が乏しいため、そもそもお金を使う所が無く、無理に稼ぐ必要がない。物資が大量に入ってくればルワンダ人は働くだろうという見立てをする。


こんな感じで施策の意図や作者の視点が一つ一つ書いてあって面白かった。

また、増補で90年代のルワンダ大虐殺についても触れている。諸外国の報道が実情と違うとか、何故メディアが報道しないのか、など。具体的には指摘していないが、言いたいことを察することはできた。

 

経済はよく分からないけど、高校までの知識で十分わかって面白かった。