読んだ備忘ログ

本とマンガの読書感想ブログ

読者ハ読ムナ(笑) ~いかにして藤田和日郎の新人アシスタントが漫画家になったか~

面白かった!!

うしおととら」「からくりサーカス」の漫画家・藤田和日郎さんの本。

以前テレビで藤田さんの仕事場を見たときに「無口禁止」って書いてあって、すごく興味深かったのを思い出し今回購入。

 

この本の制作の始まりが…藤田さんのアシスタントから漫画家になる人が多いのは何故かということが発端なのだが、読むとなるほどと思うことが沢山。面白い。

 

内容は、漫画家を目指す架空の新人アシスタント(読み手)が藤田さんと編集者にアドバイスを貰う形式になっている。

漫画家を目指す人にはオススメ。表現を学びたい人にもいいかも。

 

また、作品についてアレコレ言われることは作者を否定しているわけではないので、それに慣れてアドバイスを解釈していこうと言っている。
コミュニケーションが大事とも言っている。

 

面白かった~。

 

 

メモ:

●無口禁止
・ここの仕事場は、たとえおれが黙っていてもみんなで仲良くわいわいやってるのが好きなんで、しゃべらないとダメなんだよ。だから「無口禁止」。
・おれの場合は、ペン入れしているときは内圧がぐんぐん高まってきている状態なんだ。
・それを、アシスタントみんなが仲良くやって「藤田さん、これおもしろいですよね」とか「こいつ、こうなんですよ」とかって和気藹々 としてもらうことでなんとか帳消しにして、毎週毎週漫画を描いている。
・おれはアシスタントに絵を描いてもらうために来てもらっているんじゃない。おれの内圧を下げるために来てもらっているのよ(笑)。
・みんな映画を観ながら、「自分はこういうものが好きなんだ」と発見をして自作に活かしたり、「こういう設定だったら、こうでなきゃ物語としてまとまらないのか」と気づいたりするために必死なんだよ。
・映画を観て感想を言い合うことは、まず、おれとキミのあいだで共通の土台をつくる作業であり、自分と自分の意見や作品を切り離して第三者と語れるようにする、ひとの意見を聞けるようになっていくための訓練だから。
・藤田氏の仕事場は、メンタルをうまくコントロールできる訓練をしてるんだろうね。

●コミュニケーション
・コミュニケーション能力って、持って生まれたパーソナリティーと思いきや、本当のところは訓練なんだ。
・ひととコミュニケーションがとれれば漫画家になれると、おれは思っている。
・「他人がしていることに興味を持て」と最初に会ったときに言ったよね。私生活でも仕事でも、日ごろから他人のやっていること、ひとが好きなものに興味を持つという食いつき、元気さがあれば、いざチャンスが来たとき「やります」と手を挙げられるようになるのよ。
・ひとが話しているときには、そのひとの話を聞け。
・頭のいいひとによくいるんだ。自分を認めてもらいたくてしかたなくて、どんなところでも、誰が話していても割って入って「それってこうですよね」「いや、ボクはそう思いません」とかってやっちゃうひと。いつも自分が思ってるよりもまわりからの評価が低い人間に多いのよ。そういうひとは、性格が悪いんじゃなくて、誰からも誉められてこなかったことをこじらせちゃったんだと思うよ。
・「どんなアシスタントが欲しい?」ってプロの漫画家に聞いたらみんなそう言うよ。絵は仕込んでいけばうまくなっていくけど、性格的にウマが合う合わないは、なかなか変えらんないからね。「人柄なんていいから絵が描ければいいんだ」なんてひとはひとりもいなかった。

●作品と本人
・ある映画に対するキミの意見は、キミそのものではない。おれの映画に対する意見は「おれ」とは距離があるんだよ。つまり、映画の感想を話し合うことが、漫画家が編集者と自分の作品について話をするときの訓練だというのは、そういうこと。
・何か言われたら反論しなくていいから「確認」しろ
・いいとか悪いとか言う、その評価の「理由」が大事なんだ。

 

●個性
・「みんなと同じものが好きで、僕には個性がありません」と思ってるひとがときどきいるけど、そうじゃない。たとえみんなとおんなじ作品であっても「どこが好きなの?」って掘り下げて聞いていくと、ひとによって見かたが全然違う。
・新人の絵は、だいたい誰かの影響下にある。マネですよ。でもセリフには、わりと初めから個性が出ます。

●好きなこと
・どういうシーンが、なぜ好きなのかを細かく語れたら、それはもうキミの引き出しになっているんだよ。  
・こういう話にキミがもし泣いたんだとしたら「どこに感動したのよ?」って自分で自分に聞くんだ。
・でも、好きなものを言語化していくことが、自分の個性を磨いていくことだから。それだったらむずかしくないだろ?

 

●漫画
・〈読後感〉のイメージは、その読み切りを描く前に漫画描きが想定するべき大切なものだよ。
・読者が想像したハッピーエンドよりも上に行け。
・常識から入って、意外性を用意して、期待感の通り終わるのがベスト
・絵はとんでもなくヘタだけど読ませる漫画ってあるでしょ?逆はないんだよ。
・ただセリフのセンスがない作家は、原作をつけないかぎりダメ。それだけは言えますよ。
・かけ合いをするには、 向いている方向が反対のやつを組み合わせて出すこと
・リアリズムより漫画としてのおもしろさを優先しな
・いちばんつらくて難しいのは、おもしろいキャラクターをつくることであり、読者の想像の上をゆくおもしろい物語をつくることなんだ。

●感動
・感動するネームを描け。それ以外は見ない」ということ。これがおれが武者さんに言われてガツンと衝撃を受けた言葉なんだ。感動とは何か。「ひとの心が変わるもの」が感動で、 

●線、絵
・ゆっくり線を動かしてね。なぜならば、早く動かしてしまうと、そこに「情念」が溜まらない。
・線には描き手の想い、感情が表れるよ。それを甘く見ないほうがいい。
・なんで漫画家に対してやたらとみんな「絵」「絵」って言うのか、わかるか?  絵に対して何か言うのが、いちばん簡単だからだよ。
・一見すごく画力があっても「動き」がない絵は、漫画の絵にならないからね。ん?
・太い線だったら、それを見るときに、太い部分の内側のラインを取るか外側のラインを取るかを、見るひとが選べるんだ。ことばで説明するのはむずかしいんだけれども、フォルムに「選択肢」が出る、
・ひとの感情を動かしてカタルシスに持っていくことが目的なのであれば、それを伝える絵がいちばんいい絵なんだ。